「○○人であること」に誇りと思いやりをもって、平和をつくること

Choice

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て

名前
佐久間麗安 / Rena Sakuma
家族
4人 (11歳男の子と10歳女の子)
所在地
東京都
お仕事
Bright Choice編集長
URL
Rena Sakuma (renanarena0513) Instagram

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て

「だいにじせかい"せんそう"ってなぁに?」という妹に対して、
「だいにじせかい"たいせん"だよ。色々な国が関わっているのだから!」と返す兄。
最近、我が家で耳にした子どもたちの会話です。

戦争というものが、こんなにもリアルに感じられたことはありません。
私たちの知る「戦争」は、歴史の教科書に書かれた"史実"であり、祖父母から聞いた"昔話"でした。
それがここにきて、 "世界大戦" や "核の脅威" について心配することになるなんて。

私たちが困惑するのは、子どもたちがいま起きていることを "心で感じとる" から。思えば、私が塾のテキストで学んだ世界史は、いつも誰かのリアルだったのです。

いま、子どもたちはこの事態を目の当たりにしています。「暴力はいけない」、「他人を傷つけてはいけない」、小さいころからいわれてきたことが、なぜ大人の世界で横行されるのか。
子どもの感情に寄り添いながら、大人たちの犯してきた過ちについて、どのように伝えたらよいのでしょうか。

いま、歴史の捉え方が問われています。
河合塾の世界史のテキストを隅から隅まで勉強し、晴れて入学できた慶應義塾大学法学部政治学科では国際政治を学んだ私なのですが・・
昭和の教育で詰め込まれた私たちの歴史の知識、どう使う?

ボーダレス経済が発展し、地球規模の環境問題への取り組みが必要となるなど、子どもたちの世代は、国際社会と"共存"することで、人間社会を豊かさにしていく必要があります。たくさんの「○○人」が行き交うグローバル社会に、平和の原理原則がきちんと機能することを願ってなりません。

「No War」、「戦争反対」。
それはそうなのだけれど、大切なのは、「大人たちがなぜそれを繰り返すのか」、という歴史認識を持つことでしょう。また、その前提として、私たちは同じ人類の歴史を歩んできたようで、「○○人であること」によって歴史認識が大きく異なる可能性があることや、それが対立や差別といった国際社会の不和の温床となってきたことも、よく理解する必要がありそうです。

そして、国際社会における子育てにおいて、子どもたちには「○○人であること」を足かせにしてほしくない、というのが私の願い。

ウクライナへの軍事侵攻が始まって1週間ほど経った頃、とあるメディアで聞いたロシア生まれ兵庫育ちのタレントとして活躍する小原ブラスさんの言葉が大変印象的でした。
それというのは、
「ロシアの国民にとっても、なんのメリットもない」
「私たちはこれからどうやって生きていくのか」
「ロシア人であることを恥じてしまう」
というもの。

インターネットのような情報インフラが世界的に整備され、私たちは国家のバイアスに左右されることなく、国境を越えて客観的に世界情勢を把握できる手段を得ました。もちろん、同じロシア人でも様々な考え方がありますが、小原ブラスさんの言葉が象徴するのは「人類の共存」が、特に若い世代にとって何よりも大切であるということ。彼にとって、また、次世代を生きる多くの人々にとって、帝国主義的な「国益」という発想は"廃れたもの"でしかないのです。「○○人であること」の自意識のあり方も、いま大きく変わっているようです。

「○○人であること」という自意識をもって、他者の「○○人であること」に思いやりをもつ。それは、いま世界と共に生きる私たちにとって、国際人としてのコミュニケーション能力を高める、最も大切な教養であるかもしれません。

そんな国際人を育てることが私たち親の役割とするならば、子どもと戦争と平和について考えるときは、その歴史を丁寧に紐解く作業が必要となりそうです。

まず大切なのは「○○人であること」と「○○国のしてきたこと」を別次元のものとして捉えることでしょう。戦争とは常に「○○国」の行為であり、「○○人であること」とは別の次元で意思決定がなされるものであり、流動性の高まった現代では特に、「○○人」の幸せが「○○国」にあるとは限らないのですから。

個人のアイデンティティや価値観は、世代を超えて「○○人であること」に大きく影響するけれど、国家はたびたび、"自国の豊かさのため"という大義名分や正義を以って、自国民他国民問わず、多くの個人の命や幸せを奪ってきました。

私たちは日本人だから、まず「日本人であること」を軸に歴史を考えてみる。

世界が大恐慌に見舞われた帝国主義時代、日本という「国家」は、近隣諸国と戦争し、多くの「○○人」を不幸にしたことがあります。累積された「○○人」たち個々人の心の傷は、世代を超えて社会に深く根付き、いまなお国際関係に不和を生じさせています。それは、大人たちが過去に犯した暴力の末路。だから私たちは、いま目にする侵略行為が決して他人事ではないということ、そして決して許されるべきではないということと、向き合い続けないとなりません。

もう一つ、忘れてはならないのは、当時、日本という「国家」の暴挙によって、たくさんの「日本人」の命や幸せも奪われてしまったこと。百田直樹さんの『永遠のゼロ』で描かれた航空兵(のちの特攻隊員)宮部久蔵が、「生きて帰りたい」といって、当時戦友だった長谷川梅男に「臆病者」と至極嫌われたシーンがあります。民主主義が破綻し、個人が国家に情報操作された時代に、あの狂気の特攻隊員が、「生きたい」と願う。私たち人間の幸せの在処を痛烈なまでに再認識させてくれる点が、私がこの本を愛する理由の一つです。

祖父母と二世帯住宅に住んでいた私は、戦争の "昔話" も良く聞かせてもらいました。
私の祖父は、持病で兵役こそ免れましたが、東京大空襲の直前に足に怪我を負って歩けなくなり、危うく焼け野原になった街とともに命を落とすところでした。しかし、米軍の爆撃の噂を聞きつけた祖母が、祖父を担いで群馬の実家まで歩いて逃げたのです。

「おじいちゃんを担いで頑張って歩いたのよ~」
「おじいちゃん、おばあちゃん、生きていて、よかった~」
私は、ドキドキして、怖くなって、最後には嬉しくなって。そんな風に心を動かして聞きいったものです。

いま、子どもたちの世代は、もっと個々人が尊重されるべき時代を生きています。

"I would like to see not have a population cap, I wish there were a trillion humans in the solar system. Then there would be 1,000 Einsteins and 1,000 Mozarts." 
「(地球環境に影響を及ぼすほど人類社会が肥大化したいまでもなお) 私は、人口に制限を設けることなく、一兆人の人間がこの太陽系に生きられるような未来を見てみたい。そうすれば、1,000人のアインシュタイン、1,000人のモーツァルトがこの世に生まれるだろう。」

以前、息子と一緒に移動中の車中で聞いたとあるPodcastのインタビューで、アマゾンの創設者ジェフ・ベゾスが、自身の設立した航空宇宙企業、Blue Originについて説明していた際の言葉です。地球の資源が限られるのであれば、人類の更なる発展のため太陽系に出ていきたい、先の世代が活用できるようなインフラ(彼がアマゾン事業でインターネットやUPSやFedExなどのインフラを活用したように)を、太陽系に整備したい、というのが、彼の強い信念であり、Blue Originの事業理念なんだそう。

国家のリーダーが間違ったイデオロギーを以って破壊的な行為を犯す一方で、創造的エネルギーに満ちた一個人がいる。一国家が多額の軍事予算を投じ、世界経済に大打撃を与えているのに対して、一個人が人類の持続可能な発展のために、何世代も先の未来に投資しているのですから、いま私たちにとって何が大切なのかは明らかでしょう。

人類の歴史を生きる私たちは、当然どこかの国の「○○人」であります。しかし、同じ未来を創造する同志として、互いに「○○人であること」に誇りと思いやりを持ち、対立や不和を乗り越えられたら、平和の原理原則も機能するようになるかもしれません。

私の両親は国際結婚をしました。父は日本人、母は中国系アメリカ人。母方の祖父ときょうだいは、日本の侵略によって焦土化した中国を逃れ、アメリカの西河岸で余生を過ごしました。きょうだいのうち2人は行方不明になり、二度と会うことはなかったそうです。父方の祖父は、東京大空襲を逃れ、戦後の焼け野原で車の部品販売会社を創業しました。彼らが分かち合うことはありませんでしたが、どちらも父と母が幸せになったことを心から喜びました。

私たちの幸せってどこにあるのでしょうか?
「○○人」であっても共通するその感覚を、絶えず持ち続けたいものです。

一人ひとりが、危険に脅かされることなく、創造的に生きられるように。

〈佐久間麗安連載〉
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て

〈「戦争と平和」関連記事〉
親子で考える「戦争と平和」今だからこそ学びたい平和に関する本6選
【緊急特集】ウクライナを支援したい。いま、私たちにできること。

       
  • おとうさんのちず』 (ユリ シュルヴィッツ著、あすなろ書房)

  • 世界の歴史(角川まんが学習シリーズ)

  • 幸せそうな母と祖父

          
  • アメリカの従妹と。

  • #sunflowerfromjapan

  • 島国の日本人にはわかりづらい、国境の連なるヨーロッパの苦悩について、戦火にあるウクライナを想像しながら子どもたちと読んだ本。ポーランド侵攻を逃れ、他国で食料に乏しく土の上で寝る暮らし。お父さんが買った世界地図が、国境を越えた幸せの兆しとなって、主人公の少年の心を救います。

  • 東大名誉教授の羽田教授監修の世界史の漫画シリーズ。子どもたちは、これで世界史を学んでいるといっても過言ではありません。地域や国の政治・文化のつながりや関係に重きをおいた「横の世界史」を把握することが、ボーダレス社会で起きている事象を理解する手がかりになりそうです。

  • 父が大切にしている、亡き母のアメリカでの結婚式の写真。当時、日本人と結婚するとはどういうことだったのでしょう。祖父はどんな想いだったのでしょう。いずれにせよ、二人ともとっても幸せそう。

  • アメリカの親戚は、私の子どもたちのこともとってもかわいがってくれます。LAに住む同い年の従妹とは、趣味が合う。この日は一緒にゲームタイム。

  • 微力ながらもできることを。オフィス近くのお花屋さんでチャリティのひまわりを購入。UNHCRの寄付額も増額しました。肥沃な黒土に恵まれたウクライナは、世界第5位の小麦輸出国であり、国旗は青い空と黄金の小麦畑を象徴していること、恥ずかしながら初めて知りました。