白馬インターナショナルスクールは「プロジェクト型学習」重視の学びの場

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白馬インターナショナルスクールのサステナブル教育①

名前
草本 朋子/Tomoko Kusamoto
所在地
長野県白馬村
お仕事
白馬インターナショナルスクール設立準備財団代表理事
URL1
Hakuba International School HP
URL2
Hakuba International School Facebook

白馬に誕生!サステナブル教育を実践するインターナショナルスクール
日本でも「教育の多様化」が進むなか、「軽井沢風越学園」や「ドルトン東京学園」など、全国に先進的な学校が続々と新設され、注目を集めています。そんななか、雄大な北アルプスを臨む長野県白馬村に、地域に根付いたサステナブル教育を実践する中高一貫のボーディングスクールとして、2022年秋に開校を予定しているのが「白馬インターナショナルスクール」です。

本連載では、白馬インターナショナルスクール設立準備財団代表理事の草本朋子さんに本校創立のきっかけやスクールの特徴を伺っていきます。

初回の今回は、白馬インターナショナルスクールが導入予定の「プロジェクト型学習」を取り入れた学びに関して紹介します。

「私が家族で暮らすこの白馬村にインターナショナルスクールを作りたいと思った理由のひとつに、立地の素晴らしさがあります。さまざまな実地学習や本格的なアウトドア活動を可能にする豊かな自然環境、フィールド学習に最適な村の規模感、世界中からの移住者が集まる地域の特徴など、世界屈指の名門ボーディングスクールが集まるスイスに負けないほどの好条件がそろっています。

そんな恵まれた環境のなか、白馬インターナショナルスクールの生徒は7年生(中学1年)から10年生(高校1年)までの4年間、持続可能性をテーマにした『プロジェクト型学習』(Project Based Learning、またはPBL)と呼ばれる学びをメインに行っていく予定です。HISの学びは教室の中にとどまりません。生徒は実際に地域というフィールドに出て、現実の課題への解決策を試行錯誤しながら導き出すのです」

本校では開校に先立ち、2016年からサマースクールやスプリングスクールが開催され、プロジェクト型学習が実践されてきました。

「2016年以降、延べ200人を超えるお子さんに参加いだいています。日本の一条校の学生、インターナショナルスクールの学生、またシンガポールや香港、マレーシアなどから参加してくれた海外生もいました。リピーターも多く、毎年参加している生徒もいます」

2021年の夏には、本校の建設予定地である白馬の岩岳をテーマに、「2030年に多くの人が岩岳を訪れたいと思うためには、岩岳はどうなっていくべきか」という課題のもと、4~5人のチームに分かれた生徒たちがPBLに取り組みました。

「生徒たちはまず地図とコンパスを手に現地調査を行い、『耕作畑はどれくらいか』『空き家は何軒か』『林はどんな状態なのか』など、土地の詳細を調べます。その後、サイエンスの教師が世界のエコツーリズム事情や最新の観光実例を示し、それを参考に、実地の調査結果も踏まえて、岩岳を魅力的に発展させるための取り組みをグループごとに考えたのです」

サマースクールの最終日には、白馬村議会議員、地元不動産業者、岩岳でスキー場やホテルを経営する「白馬岩岳マウンテンリゾート」の代表にも出席いただき、生徒たちによるプレゼンテーションが行われました。

「プロジェクト型学習には、結果を発表するエキシビションがとても重要です。PBLを取り入れた公立高校として今、世界中から注目を集めている米国サンディエゴにある『High Tech High』では、学期末の最後、生徒たちが学習成果を発表するためのエキシビションが設けられており、その展示は一般公開もされているそうです」

生徒たちはプレゼンテーションやエキシビションを通して、自分たちの学びが実社会でどのような意味を持つのかを実感することが、何よりも大切なのだそう。

「さまざまな課題を解決するためには、数学や科学の知識が必須ですし、プレゼンには語学力も必要。社会の仕組みを知らなければ実現が困難なことも多いはずです。プロジェクト型学習を通して学びの必要性を生徒自身が実感し、そこからまた自発的に学習を発展させていくことが、理想的な教育だと考えています」

白馬インターナショナルスクールでは2022年9月入学の募集が開始されています。詳細はホームページの募集要項をご確認ください。また、初年度の募集要項や求められる学生像については『第2回:白馬インターナショナルスクールの求める学生像。募集要項と受験科目』もご参照ください。


〈連載概要〉白馬に誕生!サステナブル教育を実践するインターナショナルスクール
第1回:白馬インターナショナルスクールは「プロジェクト型学習」重視の学びの場(本記事)
第2回:白馬インターナショナルスクールの求める学生像。募集要項と受験科目
第3回:白馬インターナショナルスクールの「アウトドア活動とスポーツ」
第4回:「日本と欧米の融合型」白馬インターナショナルスクールのカリキュラム
第5回:「子育て移住が転機」白馬インターナショナルスクール誕生まで!
第6回:気候変動のリスクを肌身に感じる「リアルなサステナビリティ教育」
第7回:校舎なしで開校!?目指すは生徒たちと作り上げる「カーボンゼロ校舎」
第8回:海外提携にシェアオフィス!?白馬インターナショナルスクールの未来
第9回:「ボーディングスクールから世界平和へ」生徒たちに込めた願いと夢

       
  • 2016年のスプリングスクール

  • PBLのゴールはプレゼンテーション

  • ミネルバ大学のインターンを講師に迎えて

          
  • 米国サンディエゴの「High Tech High」の授業

  • 2016年、初めて白馬に生徒たちが集い、スプリングスクールが開催されました。地元・白馬をはじめ、東京や京都など全国各地から16人の生徒が参加。プログラミング、アート、段ボールを使った物づくり、アウトドア活動から「知の理論」まで、さまざまな学びを体験しました。

  • 2021年のサマースクールの最終日には、白馬村村議会議員2名、白馬岩岳スキー場を運営する株式会社岩岳リゾート社長、地元の不動産会社社長の4名のVIPを前に「2030年にあるべき岩岳の姿」についてチームで提案を考え発表。VIPの皆さんは熱心にメモを取りながら聞いてくださったそう。

  • 2019年に行われたサマースクールでは、界中の成績最優秀者が集まると言われ話題になっている米国ミネルバ大学のインターンが講師を務めたロボティクスの授業が行われました。写真は、SDGsに貢献できるロボットをデザインする授業の様子。

  • 「High Tech High」に通うGrade7th(中学1年生)の授業で行われているPBLの様子。このときは「ホームレスと貧困問題」をテーマに、生徒たちは事実と統計が記載された段ボールを掲げデモを行ったり、地域のフードパントリーに関して調べたそう。※画像は「High Tech High」の公式HPより