気候変動のリスクを肌身に感じる「リアルなサステナビリティ教育」

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白馬インターナショナルスクールのサステナブル教育⑥

名前
草本 朋子/Tomoko Kusamoto
所在地
長野県白馬村
お仕事
白馬インターナショナルスクール設立準備財団代表理事
URL1
Hakuba International School
URL2
Hakuba International School Facebook

白馬に誕生!サステナブル教育を実践するインターナショナルスクール
2022年秋に長野県白馬村での開校を予定している白馬インターナショナルスクール。今回は、本校設立準備財団代表理事の草本朋子さんに、白馬という地に、サステナビリティ教育を軸にしたインターナショナルスクールを開校しようと決意された動機などに関して伺います。

「白馬に移住してからは子育てを満喫していたのですが、2014年、ひょんなきっかけから地元・白馬高校の立て直しに携わることになりました。スキー部からは多くのオリンピアンも輩出してきた伝統ある学校にもかかわらず、当時の白馬高校は、生徒数の激減により存続の危機に陥っていたのです」

とは言え、草本さん自身も教育事業に関しては素人。そこで「生徒が集まる魅力的な高校にするためには、何をやったらいいのか」を一から勉強をする日々が始まりました。

「東京で行われる教育系のセミナーに通ったり、本を読み漁ったり......。島根県海士町の隠岐島前高校の改善を成功させた岩本悠さんに、直接お話を伺いに行ったりもしました」

そんななかで「教育改革こそが、地方創生のカギなのでは?」との思いに至ります。

「どんなにその土地に魅力があって人が集まっても、教育に不安があると、子どもたちが成長するにつれ地域を去っていってしまいます。逆に良い教育の場があれば、おのずと人は集まるということに気が付いたのです」

その後、白馬高校は無事に統廃合の危機を乗り超えますが、草本さんは「ここに日本全国、いや世界中から生徒が集まるインターナショナルスクールがあったら、白馬がもっと盛り上がるにちがいない」と考えるようになります。

「学校は人を集めるだけでなく、地域への経済効果も高いのです。私に理想的な子育ての場を提供してくれた白馬というコミュニティに対して、なにか恩返しができないだろうか、との思いもあり、インターナショナルスクールの設立を構想するようになりました」

さらに、せっかく白馬で開校するのであれば「サステナブル教育を学びの軸にした学校にしたい」との思いも芽生えるようになったそう。

「今や気候変動が私たちの生活に及ぼす影響は甚大で、見過ごす事はできない状態にまできています。私自身も、白馬での暮らしのなかで日々、気候変動の脅威を実感しています。豪雪地帯として知られる白馬ですが、降雪は年々減少し、桜が咲く季節も早くなっています。

自然との相互依存を理解し、経済成長と地球環境の持続可能性をバランスよく保っていくためには、まずは教育を変革する必要があるのではないか、と思うようになったのです」

自然と共存する暮らしのなかで、同じような危機感を抱いている住民も多い土地だからこそ、地域に根付いたリアルなサステナブル教育が提供できるのはないか、とも考えたそうです。

「とはいえ、私には学校を作った経験などありません。そこで、お父様が晩年住まれていた白馬の家を引き継ぎ、よく白馬に来られていた、元ヤフー株式会社代表取締役社長で現・東京都副知事の宮坂学さんに私の構想を相談させていただいたのです。宮坂さんが『いいじゃないですか、一緒にやりましょう』と賛同してくださり、私の背中を押してくれました」

宮坂さんだけでなく、社会活動家の湯浅誠さんも理事に加わり、こうして2017年に白馬インターナショナルスクールの設立準備財団が立ち上がります。次回は「カーボンゼロ校舎の建設計画」に関してのお話を伺います。


〈連載概要〉白馬に誕生!サステナブル教育を実践するインターナショナルスクール
第1回:白馬インターナショナルスクールは「プロジェクト型学習」重視の学びの場
第2回:白馬インターナショナルスクールの求める学生像。募集要項と受験科目
第3回:白馬インターナショナルスクールの「アウトドア活動とスポーツ」
第4回:「日本と欧米の融合型」白馬インターナショナルスクールのカリキュラム
第5回:「子育て移住が転機」白馬インターナショナルスクール誕生まで!
第6回:気候変動のリスクを肌身に感じる「リアルなサステナビリティ教育」(本記事)
第7回:校舎なしで開校!?目指すは生徒たちと作り上げる「カーボンゼロ校舎」
第8回:海外提携にシェアオフィス!?白馬インターナショナルスクールの未来
第9回:「ボーディングスクールから世界平和へ」生徒たちに込めた願いと夢

       
  • 白馬で子育てができた恩返しを

  • 「白馬高校グローバル講演会」の打ち合わせ

  • 宮坂学さんの話を聞く生徒たち

          
  • 教育シンポジウムを開催

  • 「私は100点満点の母親ではありませんが、我が子に白馬という故郷を与えられたことだけは誇りに思っているんです」と、草本さん。「理想的な子育ての場を与えてくれた白馬に恩返しがしたい」との思いも一因となって本校創立構想は始まりました写真は白馬のトレランに出場した長男と二女。

  • 生徒数の激減により存続の危機に陥っていた白馬高校の立て直しには、あの手この手を使い試行錯誤されたそう。草本さんの大学の同級生でもある湯浅誠さんを招き、「白馬高校グローバル講演会」に登壇頂いたこともありました。これは事前に打ち合わせを行った際の1枚で、向かって右から2人目が湯浅さん。

  • 本校設立に賛同いただいた宮坂学さんには、2016年のスプリングスクールで講話もしていただきました。「当時はまだヤフーの社長だった宮坂さん。生徒からの『社長として社員にどんな言葉をかけるようにしていますか?』などの質問に真摯に答えてくださいました。生徒たちの心にも響いたようです」

  • 白馬インターナショナルスクール設立準備財団が2017年4月に立ち上がると、さっそく翌月の5月には、名誉顧問の岡田武史さんや国際バカロレア日本大使の坪谷郁子先生らをお招きして「白馬の教育の可能性を考えるシンポジウム」が開催されたそうです。